2018年の世界10大リスク!第1位は「中国」





リーダーなき世界を「Gゼロ時代」と名付けて注目された政治学者イアン・ブレマー氏が社長を務める、米調査会社ユーラシア・グループは、2018年の世界における「10大リスク」を発表しました。

参考:TOP RISKS 2018|eurasia group

同調査会社は毎年1月に、その年の世界の政治・経済に大きな影響を与えそうな事象を予測しています。

昨年2017年には、「アメリカ・ファースト」を掲げる、予測不能なアメリカのトランプ大統領の誕生で、「わが道を行くアメリカ」が多国間の枠組みを主導しなくなり、世界が不安定化するというリスクを首位に挙げ、見事的中しています。

さて、2018年に世界が直面するリスクとはどんなものでしょうか。

2018年 世界の10大リスク

1位 真空を愛する中国

単独行動主義、保護主義色を強く打ち出すトランプ政権の誕生で、アメリカの存在感は低下し、リーダー不在になった世界秩序の「真空」を、広域経済圏構想「一帯一路」やインフラ投資などを通じて国際社会での存在感を一気に増した中国が埋める形で、影響力を拡大させていくというリスクを第1位に選びました。

中国の習近平国家主席は、2017年10月の中国共産党大会で、2050年までに中国が現代化された社会主義の「強国」となり、世界を主導する大国に引き上げるという野望を公言しました。

国内の権力基盤を強固にした習近平国家主席が、アメリカにかわり、世界秩序構築に乗り出し、真空を埋め始めようとしています。

国際関係論では「権力の真空」が紛争を招くとされます。

このことを、ユーラシア・グループのイアン・ブレマー社長は、「China loves a vacuum(真空を愛する中国)」と表現しています。

ブレマー氏はこれまで、過激派組織「イスラム国」のテロ拡散や、イギリスのEU離脱などを予測していますが、「2018年の世界は、地政学的に過去20年で最も危険な環境だ」とも述べています。

また、中国が影響力を増大させ、北朝鮮情勢などをめぐり、日本やアメリカと摩擦を生む恐れがあるとも指摘しています。

2位 偶発的な衝突

第2位は、北朝鮮情勢、シリア情勢や世界規模のサイバーテロなど、偶発的な衝突が起きる危険性を挙げました。

第三次世界大戦の瀬戸際にいるわけではありませんが、米欧など先進国の影響力が弱まっていることから、世界的な保安官(Global security underwriter)が不在の世界で、北朝鮮やシリアなどで国際的な紛争が起きるリスクが高まっていると指摘しています。

中でも北朝鮮情勢については、北朝鮮とアメリカなどとの交渉や調整のないまま緊張状態が続き、偶発的に軍事衝突が起きる危険性を指摘しています。

ブレマー社長は「今年は、リーマンショック並みの、大きな予期せぬ危機が起こりうる1年になるかもしれない」と警告しています。

3位 最新技術の「冷戦」

アメリカと中国の間で、人工知能(AI)やスーパーコンピューターなど画期的な技術革新の競争が進行し、覇権争いが起きており、米中の競争を軸にした最新技術の「冷戦」が第3位に選ばれました。

これらの次世代技術の勝者が、経済的・地政学的に今後数十年を支配するだろうと予測しています。

4位 メキシコ

メキシコの北米自由貿易協定(NAFTA)再交渉や、大統領選が市場にとって大きなリスクになるとしています。

2018年7月に予定される大統領選で、反米を掲げる候補のアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール氏が当選すれば、外資導入など従来の経済重視路線が変更を迫られることになります。

5位 米・イラン関係

核合意を巡って関係悪化が進む、アメリカとイランの関係が市場のリスクになるとしています。

トランプ政権はイランを悪の根源と見なしており、イランの核合意が破棄されれば、世界は新たな危機に直面することになると述べられています。

6位 組織や機構の衰え

日本を除いた先進国では、官僚的機関は弱体化し、フェイクニュースによりメディアの信頼が低下していることを挙げています。

7位 保護主義2.0

農業や工業のほか、デジタル知財にも保護主義が拡大し、自由な貿易ができなくなりつつあるリスクを挙げています。

8位 イギリス

イギリスにとって、「2017 年は面白くなかったかもしれないが、2018 年は最悪なものとなる」と予測しています。

欧州連合(EU)離脱問題が内政にも影を落とし、国内政治とEU離脱の交渉がイギリスに危機をもたらすとしています。

また、北アイルランドについても、「重大な懸念材料となる」としています。

9位 南アジアの「アイデンティティー政治」

ヨーロッパとアメリカで起きた「内向き志向」なアイデンティティ政治が、東南アジアやインド半島にも波及し、イスラム教や中国、他のマイノリティへの反感、インドのナショナリズムが台頭するリスクを指摘しています。

10位 アフリカの安全保障

テロや内戦への対応に、国際社会が距離を置き始めています。

大陸の主要国(コートジボワール、ナイジェリア、ケニア、エチオピアなど)は投資が活発ですが、これらの地域に不安定な地域(マリ、南スーダン、ソマリアなど)のマイナスの影響が及ぶ可能性があることを指摘しています。

さらに、ISISは西アフリカで勢力を拡大し、東アジアに拡大する可能性が高いと述べています。