GDPとは





GDPについてよく知れば、経済がもっとわかるようになります。

新聞やテレビのニュースでもよく聞くGDPについておさらいしましょう。

GDPとは

GDPとは、Gross Domestic Productの略で、日本語では「国内総生産」といい、一定期間(1年間または四半期)に、国内で新たに生み出された「付加価値」の総額を表します。

GDPは、その国の経済を包括的に表す統計であり、その国の経済の豊かさを計る指標と言われています。

この中には、商品の原材料費などは含まれません。

これはどういうことかというと、例えばトヨタなどの自動車会社は、車を作るために本体となる金属板・タイヤ・塗料や、さまざまな自動車部品を仕入れ、それらを組み立てて製造、販売しています。

これらの原材料費・部品費の値段は、最終的にできた商品の価格に含まれるので、外して計算しないと、二重に(ダブって)計上してしまうことになります。

つまり、売上から原材料費・部品費の値段を引いたものが「付加価値」となり、これは、最終的な消費者の購入額と一致することになります。

また、日本企業が海外で生産したモノやサービス、家事労働やボランティア活動など市場で取引されないものの価値も含まれません。

GNPの基本式

GDP=個人消費+民間設備投資+政府支出+純輸出(輸出-輸入)

国内で、お金を支出するのは、「個人」、「民間(企業)」、「政府」の大きく3つに分けて考えることができます。

個人消費

個人消費とは、個人が家計を通してモノやサービスを購入するために使った金額の総計です。

日本では、個人消費がGDPに占める割合は約6割と大きいため、景気や経済成長の動向を左右する重要な要素となっています。

民間設備投資

民間設備投資とは、民間企業が事業の拡大などを目的にして、工場や事業所を建設したり、機械などの設備を購入・更新したりするなど、設備に対して行った投資金額の総計です。

土地は新たに生み出されたものではないため、土地の売買はGDPには計上されません。

単に「設備投資」と言われることが多いです。

これらの設備への投資は、一時的には企業のキャッシュフロー(現金収支)を悪くしますが、増強した設備や機械は、耐用年数が何年、何十年とあり、長い期間、継続して生産に使用されますので、企業の成長には不可欠のものとなります。

設備投資の増減は、企業の景況感を反映し、景気動向を判断するうえで重要な指標となります。

政府支出

政府支出とは、国が発注する公共工事と、国民に行政サービスを提供するために公務員に支払う給料の金額の総計です。

公共工事は景気が悪いときには増え、景気が良いときには減る傾向があります。

純輸出

純輸出とは、財・サービスの輸出から輸入を引いたもので、「貿易収支」のことです。

日本は「モノづくり大国」として、原材料を外国から輸入して製品をつくり、それらを輸出する「加工貿易」によって経済が繁栄してきました。

GDPには、外国との輸出や輸入も含める必要があります。

輸出金額が輸入金額よりも多ければ、純輸出はプラスとなり、GDPにプラスされます(貿易黒字)

逆に、輸出金額が輸入金額よりも少なければ、純輸出はマイナスとなり、GDPから引かれることになります(貿易赤字)

名目GDPと実質GDPの違い

GDPには、「名目GDP」と「実質GDP」の2種類があります。

GDPが増加するということは、

①その国におけるモノ・サービスの生産量が増加している

②その国におけるモノ・サービスの価格(物価)が上昇している

のどちらかが起きていると考えることができます。

名目GDPとは、GDPを計算するために必要な値を、すべてそのまま合計して算出されたものです。

名目GDPでは、上記①と②のどちらがどのような影響を及ぼしているかが明確になりません。

一方、実質GDPとは、名目GDPから物価の変動による影響を差し引いて、その年に新たに生み出されたモノやサービスの「本当の価値」を算出したものです。

つまり、名目GDPから「物価変動の影響」を除いたのが実質GDPとなります。

こうすることで、GDPの変化のうち生産量による変化だけを取り出すことができます。

世界の名目GDPランキング(2016年)

国名 名目GDP※1 一人当たり名目GDP※2
1 アメリカ 18,624.45 57,607.61(8位)
2 中国 11,232.11 8,123.26(74位)
3 日本 4,936.54 38,882.64(22位)
4 ドイツ 3,479.23 42,176.85(19位)
5 イギリス 2,629.19 40,049.78(21位)
6 フランス 2,466.47 38,177.86(24位)
7 インド 2,263.79 1,741.65(145位)
8 イタリア 1,850.74 30,507.18(27位)
9 ブラジル 1,798.62 1,741.65(71位)
10 カナダ 1,529.76 42,224.94(18位)

単位:※1 10億USドル、※2 USドル
出典:IMF Data Mapper

一人当たりGDP

一人当たりGDPとは、GDPの総額をその国の人口で割った数値で、国民一人ひとりの平均的な生産量を表します。

GDPを、その国全体の経済的な豊かさを表す指標と考えた場合、不都合が生じることがあります。

GDPは、国の規模、人口による影響を受けますので、国民の数が多い国と少ない国とを比べれば、自ずと格差がでやすい傾向があるからです。

GDP世界2位の中国は人口が約13億8000万人、2位の日本は人口約1億3000万人ですから、人口の異なる国同士のGDPを単純に比較しても、あまり意味はありません。

世界のGDPランキングを見ても、ランキングの高い国の国民がみんな経済的に豊かかと言えば、そうとは言えないのが現状です。

その国の国民一人ひとりの経済力・生活水準を図る上では、一人当たりGDPは重要と言われています。

世界の一人当たりGDPランキング(2016)

 国名 一人当たりGDP※
1  ルクセンブルク  104,094.93
2  スイス  80,345.62
3  ノルウェー  70,553.11
4 マカオ  69,559.18
5  アイルランド  64,782.30
6  アイスランド  59,629.05
7  カタール  59,513.91
8  アメリカ  57,607.61
9  デンマーク  53,744.64
10  シンガポール  52,960.56
22 日本  38,882.64

単位:※USドル
出典:出典:IMF Data Mapper

GDPのまとめ

●GDPとは、一定期間にその国で生産された付加価値の総額

●GDP=個人消費+民間設備投資+政府支出+純輸出

●名目GDPとは、GDPを計算するための値を、すべてそのまま合計して算出したもの

●実質GDPとは、名目GDPから、物価変動による影響を引いたもの

●一人当たりGDPとは、GDPの数値を人口で割ったもの

経済成長率とは

このGDPが前年度に比べてどのくらい増減したのかを見ることで、国内の景気変動や経済成長を推定することができ、それを「%」で示したものを経済成長率といいます。

GDPとGNIの違い

GDPとよく似た指標にGNIがあります。

GNIとは、Gross National Incomeの略で、日本語では「国民総所得」といいます。

過去には、国民総所得のことを「GNP」と呼んでいましたが、近年、GNIに変更されました。

GNIは、その国の国民が1年間に生み出した付加価値の総額のことです。

GDPは「国内」で生み出した付加価値の合計ですので、日本企業の海外での生産額や、日本人メジャーリーガーが海外で稼ぐお金などは含まれません。

一方GNIは、GDPとは違い、国内外を問わずに「その国の国民」が生み出した付加価値の合計ですので、日本企業の海外での生産額や、日本人メジャーリーガーが海外で稼ぐお金も入っています。

「国民」とは「国籍」に限定した考え方ではなく、その国に6か月以上住んでいる人を対象にしています。

一昔前までは、GNPが使われることが多かったのですが、海外で活躍する企業や個人が増えた結果、国内の景気や経済状況をより正確に表すものとして、近年ではGDPを使う事の方が多くなっています。