アメリカのトランプ大統領は、2017年1月に就任して以来、予測不能な行動や暴言を繰り返し、身内である共和党や側近たちからも見放されています。
政権誕生から1年が経ちますが、選挙のときに掲げていた政策についてもほとんど実現できていないのが実情です。
CNNによる2017年12月の世論調査では、トランプ大統領の支持率は35%まで低下しています。
過去50年間に実施した世論調査で、1年目の年末の支持率が50%を切った例は、レーガン大統領の49%のみでしたが、記録を更新した格好です。
そこで今、囁かれているのが「トランプ大統領降ろし」の噂です。
もしこれが本当に実行されれば、トランプ大統領による政策実現を期待して買いが膨らんでいるアメリカの株式市場において、失望売りが殺到し、株価が暴落する危険性もあり、為替や世界中の株式市場も大混乱に陥る可能性があります。
トランプ降ろしの3つの可能性
ロイター通信によると、ワシントンやウォール街ではすでに、「トランプ大統領がホワイトハウスを追われ、マイク・ペンス副大統領が大統領に昇格した場合、アメリカはどう変わるか」とのシミュレーションがなされ始めているということです。
可能性として考えられるシナリオは3つあります。
自ら辞任する
1つ目が、自ら大統領職を辞任するという可能性です。
ビジネスマンでもあるトランプ大統領は過去にも、カジノ・リゾート事業を経営する自身の会社を4度も破産させています。
事業に行き詰まったら破産し、再度やり直せばいいと考えているのではないかとも思えます。
大統領職も事業と同じように、「うまくいかなくなったから辞めてしまおう」と考えてもおかしくなさそうです。
もしもトランプ大統領が辞任すれば、継承順位から副大統領であるマイク・ペンス氏が大統領に就任します。
過去に辞任した大統領
44人の元アメリカ大統領のうち、一期4年ないし二期8年の任期を全うしたのは35人です。
任期途中に離任した9人のうち、8人は在任中の死亡が原因です(リンカーン大統領やケネディ大統領など4人は暗殺されています)。
存命のまま離任したのはニクソン大統領1人で、「ウォーターゲート事件」の発覚を受けて自ら辞任し、副大統領のフォード氏が大統領に昇格しました。
弾劾
2つ目が、弾劾裁判が行われるという可能性です。
「弾劾(だんがい)」とは、政府高官や裁判官など一定範囲の公職にある者の犯罪や不正を調べ上げ、責任を追及することです。
アメリカの議会には、大統領や副大統領を弾劾する権限が与えられています。
大統領が重大な犯罪に関与したとして、下院が単純過半数の賛成に基づいて訴追すると、上院が弾劾裁判を行うことになります。
そして、訴追案件に関して、上院出席議員の3分の2以上が有罪と判断すれば、大統領は職を解かれることになります。
大統領と同じ共和党議員が議会の過半数の議席を占めているので、大統領の弾劾は決して簡単ではありませんが、身内である共和党にも見限られるようだと、罷免の可能性が高まってきます。
過去の弾劾
過去に弾劾された大統領は、アンドリュー・ジョンソン大統領(1868年)と、ビル・クリントン大統領(1998年)の2人だけです。
ジョンソン大統領は陸軍長官を解任したことで、クリントン大統領は、アーカンソー州知事時代のセクハラに関する裁判の中で、ホワイトハウス実習生との「不適切な関係」疑惑の偽証をめぐって、それぞれ弾劾裁判に持ち込まれました。
いずれも、下院で訴追されましたが、上院で「有罪ではない」と判断され、大統領の座を追われることはありませんでした。
ニクソン大統領は1974年、ウォーターゲート事件をめぐる司法妨害などで、下院司法委員会が下院に弾劾を勧告した段階で自ら辞任したため、弾劾裁判は行われませんでした。
合衆国憲法修正第25条第4節
3つ目が、アメリカ合衆国憲法修正25条第4節が発動されるという可能性です。
この条項は、副大統領と閣僚による「合法的クーデター」の手順について述べられたものです。
具体的には、「副大統領と閣僚の過半数が議会に対して、大統領がその職務上の権限と義務を遂行する能力がないと申し立てれば、副大統領が直ちに大統領代行として職務を遂行するものとする」と規定されています。
つまり、ペンス副大統領と閣僚の過半数が賛成すれば、トランプ大統領を解任することができるということです。
ただし、大統領が不服を申し立てて、これに対して上下両院の3分の2が副大統領を大統領代理として認めなければ、大統領の復帰が認められます。
過去の例
実際に当該第4節が発動されたことは過去に一度もありません。
実現のハードルはきわめて高いと言えますが、歴史上始めて発動されることはあるのでしょうか。
まとめ
2018年11月に行われる中間選挙において、今のままのトランプ大統領の支持率の低さでは、共和党は80議席を失うのではないかとまで言われています。
実際、中間選挙の前哨戦ともいわれる昨年行われたアメリカの2つの州知事選や州議会選挙では、共和党が惨敗を喫しています。
第45代アメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ氏は、いつまで大統領でいられるのでしょうか。