多くのテレビやニュースでも取り上げられ、話題となったタックスヘイブン。
「タックスヘイブンって何のこと?」
「お金持ちが悪いことをしているの?」
という疑問に、わかりやすく答えたいと思います。
タックスヘイブンとは
タックスヘイブン(Tax Haven)とは、日本語では租税回避地と言われます。
何となくお金持ちがズルいことをしているイメージから、Tax Heven(タックスヘブン)と勘違いされる方が多いのですが、ヘブン(天国)ではなく、ヘイブン(回避)です。
タックスヘイブンには統一的な定義はありませんが、一般的には税金の無い国・地域または著しく低い国・地域を指します。
日本のタックスヘイブン対策税制では、税率が20%以下の国・地域のこととされています。
国土が小さく、自国の産業が乏しい弱小国にとっては、自国だけでは産業が成り立ちません。
そこで、税金を優遇することを売りにして、外国から金融などのサービス産業を誘致し、海外の資産を集めることで、自国の経済を発展させることができます。
しかし、その税制を利用した企業や富裕層の、課税逃れを容認しているとして問題となっています。
課税逃れの仕組み
まず、企業やファンドがタックスヘイブンに法人を設立します。
これを「ペーパーカンパニー」と呼び、実際には法人としての活動をほとんどしていない「実態のない会社」です。
そして、国内で稼いだ利益の一部を、タックスヘイブンにあるペーパーカンパニーに、支払いとして移します。
そうすると、国内にある会社の資産は減ったことになりますので、表面上儲けが少なくなったように見えて、そこに掛けられる税金は減ることになります。
タックスヘイブンの特徴として、銀行などでも匿名性や秘密保持性あることが挙げられ、そこでどういった取引や、資産管理を行っているのかがバレにくいのです。
ということは、タックスヘイブンに流された資産は、会社オーナーが自由に使えるお金となるのです。
経済がグローバル化し、誰でも国境を越えて会社を作り、資本移動が可能となった現代社会においては、こうした動きは違法ではないものの、元々企業があった国において、税収が減ってしまうという弊害が起きます。
2016年の「パナマ文書」の流出によって、タックスヘイブンを利用した大富豪たちの資産隠しの実態が明らかになり、世界に衝撃を与えました。
タックスヘイブンは「脱税か」「節税か」と言われると線引きが難しく、違法ではないけれども「グレー」だと言わざるを得ないのです。
タックスヘイブンの国・地域
タックスヘイブンの多くは、カリブ海やヨーロッパの小国ですが、先進国においても、投資所得の非課税または税の軽減などを行っており、統一的な定義や国際的なルールを作るのは困難なのが現状です。
1998年にOECDが発表した「有害な税の競争」についてのレポートによると、タックスヘイブンの判定基準は、以下の1に該当し、かつ2~4のいずれかに当てはまる場合となっています。
1. 金融・サービス等の活動から生じる所得に対して無税若しくは名目的課税であること
2. 他国と納税者に関して有効な情報交換を行っていないこと
3. 税制を含む法制度について透明性が欠如していること
4. 誘致される金融・サービス等の活動について、実質的な活動が行われることが要求されていないこと
OECDが公表したタックスヘイブンリスト(2009年)
OECDは2009年に、国際的に合意された租税の基準の実施を約束したが、まだ実施されていない国・地域、いわゆる「グレーリスト」と、国際的に合意された租税の基準に非協力的な国・地域、いわゆる「ブラック・リスト」を発表しました。
国際的に合意された租税の基準の実施を約束したが、まだ実施されていない国・地域
●アンドラ
●アンギラ島(英国)
●アンティグア・バーブーダ
●アルバ(オランダ)
●バハマ
●バーレーン
●ベリーズ
●バミューダ諸島(英国)
●英領バージン諸島
●ケイマン諸島(英国)
●クック諸島
●ドミニカ
●ジブラルタル(英国)
●グレナダ
●リベリア
●リヒテンシュタイン
●マーシャル諸島
●モナコ
●モントセラト(英国)
●ナウル
●オランダ領アンティル諸島
●ニウエ
●パナマ
●セントクリスト
●ファー・ネーヴィス
●セントルシア
●セントビンセント及びグレナディーン諸島
●サモア
●サンマリノ
●タークス・カイコス諸島(英国)
●バヌアツ
【その他の金融センター】
●オーストリア
●ベルギー
●ブルネイ
●チリ
●グアテマラ
●ルクセンブルク
●シンガポール
●スイス
国際的に合意された租税の基準に非協力的な国・地域
※現在は国際的に認められている税基準を約束しています。
●コスタリカ
●マレーシア(ラブアン島)
●フィリピン
●ウルグアイ