キャッシュカードの不正引出しとは、銀行のキャッシュカードがスキミングにより偽造されたり、盗難されたりしてしまい、犯人に不正に口座から現金を引き出されてしまう金融犯罪のことです。
目次
どうやって偽造されるの?
一般的には「スキマー」という機械を使ってスキミングが行われます。
例えば、簡易な鍵の付いたロッカーを開錠し、カードを取り出して機械でデータを読み取るケースや、暗証番号方式の貴重品ボックスやコインロッカーなどの近くに隠しカメラをしのばせ、盗み出した暗証番号で開錠し、カードのデータを読み取るケースなどがあるようです。
もしも被害にあってしまったら
偽造・盗難キャッシュカードの不正引出しによる被害にあったときの補償は、平成18年2月に施行された「預金者保護法」という法律が適用されます。
これにより、キャッシュカードが偽造・盗難されて、現金が引き出された場合も、原則として被害額の全額が補償されます。
ただし、本人に重大な過失または過失があった場合は補償されないか、補償額が一部減額されてしまうこともあります。
重大な過失とは
「過失」とは、簡単に言えば不注意のことです。
全国銀行協会による申し合わせによると、
(本人の重大な過失となりうる場合)
本人の重大な過失となりうる場合とは、「故意」と同視しうる程度に注意義務に著しく違反する場合であり、その事例は、典型的には以下のとおり。(1) 本人が他人に暗証を知らせた場合
(2) 本人が暗証をキャッシュカード上に書き記していた場合
(3) 本人が他人にキャッシュカードを渡した場合
(4) その他本人に(1)から(3)までの場合と同程度の著しい注意義務違反が
あると認められる場合
とされています。
重大な過失があったと認められた場合は、偽造・盗難カード被害ともに補償されません。
特によくあるのが、高齢の方がキャッシュカードにマジックで暗証番号を書き込んでいるケースです。
「忘れてしまうから」という理由でしょうが、万が一不正引出し被害にあっても、補償されない可能性が高いのです。
もし、ご家族や周りでキャッシュカードに暗証番号を書いている方がいれば、注意してあげてください。
過失とは
(本人の過失となりうる場合)
本人の過失となりうる場合の事例は、以下のとおり。(1) 次の①または②に該当する場合
① 金融機関から生年月日等の類推されやすい暗証番号から別の番号に変更するよう個別的、具体的、複数回にわたる働きかけが行われたにもかかわらず、生年月日、自宅の住所・地番・電話番号、勤務先の電話番号、自動車などのナンバーを暗証にしていた場合であり、かつ、キャッシュカードをそれらの暗証を推測させる書類等(免許証、健康保険証、パスポートなど)とともに携行・保管していた場合② 暗証を容易に第三者が認知できるような形でメモなどに書き記し、かつ、キャッシュカードとともに携行・保管していた場合
(2) (1)のほか、次の①のいずれかに該当し、かつ、②のいずれかに該当する場合で、これらの事由が相まって被害が発生したと認められる場合
① 暗証の管理
ア 金融機関から生年月日等の類推されやすい暗証番号から別の番号に変更するよう個別的、具体的、複数回にわたる働きかけが行われたにもかかわらず、生年月日、自宅の住所・地番・電話番号、勤務先の電話番号、自動車などのナンバーを暗証にしていた場合イ 暗証をロッカー、貴重品ボックス、携帯電話など金融機関の取引以外で使用する暗証としても使用していた場合
② キャッシュカードの管理
ア キャッシュカードを入れた財布などを自動車内などの他人の目につきやすい場所に放置するなど、第三者に容易に奪われる状態においた場合イ 酩てい等により通常の注意義務を果たせなくなるなどキャッシュカードを容易に他人に奪われる状況においた場合
(3) その他(1)、(2)の場合と同程度の注意義務違反があると認められる場合
上記のいずれかの過失があった場合は、偽造カードは全額補償、盗難カードは75%が補償されます。
補償を受けるためには?
万が一不正引き出し被害にあってしまったら、すぐに金融機関と警察に届け出をしましょう。
被害額が補償される対象期間は、金融機関に被害を通知した日からさかのぼって30日までです。
長期入院や長期海外出張などのやむを得ない事情があったときは、この限りではありません。
被害を防ぐためには
暗証番号を推測されないものにする
一番簡単にできる対策は、暗証番号を推測されないものにすることです。
覚えやすいからといって、暗証番号を生年月日にするのは絶対に止めましょう。
キャッシュカードと免許証が一緒に入った財布を落としてしまったら、簡単に被害にあってしまいますし、補償額が減額されます。
ICキャッシュカードに切り替える
偽造被害を防ぐためには、偽造が困難な、ICチップが搭載された「ICキャッシュカード」を利用するのが有効だと言われています。
最近作成されたものは、ICキャッシュカードが採用されていますが、古いキャッシュカードは「磁気カード」という、磁気ストライプ情報を読み取る仕組みのキャッシュカードなっています。
古いキャッシュカードをお使いの方は、ICキャッシュカードに切り替えるのも被害を防ぐための対策です。
キャッシュカードに生体認証機能を付ける
生体認証機能付きICキャッシュカードとは、一人ひとり異なる自分の「体の情報(生体情報)」をICチップに登録したキャッシュカードのことです。
登録する生体情報は、指静脈(指紋とは異なります)と、手のひら静脈タイプの2種類があり、どちらを採用しているかは銀行によって異なります。
これにより、万が一キャッシュカードの盗難にあっても、登録した生体情報が一致しないと引き出しができない、つまり、本人しか引き出しができなくなります。
1日に引き出せる限度額を設定する
キャッシュカードで1日に引き出せる限度額を設定しておくのも、万が一不正引き出し被害にあったときに、被害を最小限に抑えられる対策の一つです。
引出し限度額を下げる設定は、ATMでも簡単にできます。ただし、限度額の引き上げには、窓口での本人確認が必要になります。
実は、銀行は頻繁に口座から現金の引出しがある口座を監視しています。
これは、銀行口座が振込詐欺などの不正取引に使用されることを防止するためでもあるのですが、引出し限度額いっぱいの現金を、毎日毎日頻繁に引き出していたら、銀行側も不審に思って連絡をしてきてくれることが多いです。
そこで、不正引き出し被害にあっていることに気付くということもあります。
まとめ
被害にあわないための対策は、簡単にできるものばかりです。
「わたしはキャッシュカードを盗まれたりしないから大丈夫!」と思っていても、いつ自分が被害にあうかわかりません。
嫌な世の中ですが、被害にあってから後悔するのでは遅いので、自分の身は自分で守りましょう。